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2011年8月17日 (水)

『チヨ子』(宮部みゆき著) 朗読会で照れ隠しのために気ぐるみを着たかったという動機から作品ができてしまうのがすごい

宮部みゆきの久々の短編集。2000年からの10年間でアンソロジー等で発表されたもの。いきなりの文庫化も嬉しい。

『雪娘』 久しぶりの同窓生が生まれ育った街に集まる。かれらは小学生のときに友達の女の子を殺されていた。幼い頃に心を殺してしまい、幽霊すら見えなくなった大人になる、という悲しさ。

『オモチャ』 寂れていく商店街に佇む玩具屋。その内で外で静かに騒動が起きる。作家は見慣れた風景から物語を紡いでいく。

『チヨ子』 スーパーの売り出しのアルバイトでうさぎの気ぐるみを着ることになった女性が、なんとも不思議な光景を観てしまう、という物語。本人が朗読会で照れ隠しのために気ぐるみを着て舞台に立ちたかったという理由からできた作品らしいが、そういう理由でこういう作品が書けるのはすごいと思う。
ただ、幼い時に、”チヨ子”のような存在を持たなかったから悪事を繰り返す、というのはどうなのだろう。

『いしまくら』 犯罪の被害者が被害にあっても仕方なかったのだ、という風潮にまさに、「石枕」を置くような作品。そういう風潮はおかしい、と思う、その小さな心がその風潮をささやかだけれど変えていく。こういう物語を描く宮部みゆきが好きだ。

『聖痕』 かって、虐待を受けていた両親を殺してしまった少年。虐待するような親は殺されて当然、という風潮の中、彼はそれでも「殺してはいけない」と言う。人間は勝手に神を創り、神を殺し、そして救世主を創りだす。自らを「鉄槌のユダ」と呼ぶものは”英雄”なのかもしれないが、しかし”英雄”などというものに、宮部みゆき自身が『英雄の書』という作品で疑問を呈している。

”英雄”などというものが存在しない世界の方が、ずっと平穏で、あるべき姿なのかもしれない。

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著者:宮部 みゆき
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