『早坂家の三姉妹 brother sun』 (小路幸也著) 平穏と思われている生活の中にもさざ波は常に立っている。一筋縄ではいかない。それが人生
古い一軒家に住む早坂家の3姉妹、あんず、かりん、なつめ。再婚した父と義母、異母弟はスープの冷めない近所に住んでいる。その三姉妹を、疎遠になっていた伯父が訪ねてくる。伯父の来訪が、平穏に思われていた三姉妹とその家族の生活にさざ波をたてていく。
「東京バンドワゴン」シリーズで小路幸也お得意の家族ものだが、こちらは3姉妹が主人公ということもあってか、やや生々しい。「東京バンドワゴン」シリーズではあまり性的な要素は出てこないが、この物語ではそういう部分に触れるからだろうか。
「自分はどこから来たのか」。それを問いかけることは家族という共同体の根底を脅かすことにつながる。しかし、ひとはそれを問わずにはいられない生き物なのかもしれない。
平穏と思われている生活の中にもさざ波は常に立っている。生活とはそういうもので、だからさざ波が立つことを恐れてはいけない。さざ波が立った時にどのような心構えでいれるか、それが大切なのだということを、この三姉妹を通じて感じる。そして、やっぱり私たちの生活はさざ波が立ち続けていき、そしてそれを乗りこなしていくしかないのだ。
最終章は、なかなか良い。一筋縄ではいかない。それが人生。
![]() | ![]() | 早坂家の三姉妹 brother sun (徳間文庫)
著者:小路幸也 |
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