『平安京遷都〈シリーズ 日本古代史 5〉』 (川尻秋生著) 平安時代に確立された政治システムは、現代の日本にまで脈々と引き継がれていく
私は日本の原点は奈良時代にあると思っているが、それはどうも明治以降の史観なのかもしれない。この本の「まえがき」では明治に至るまで、朝廷の在りようは平安時代に作られたものが引き続いていた、ということが述べられている。
平城の都から長岡京に、そして平安京に都が遷る。そこには、天武系から天智系への皇統の移行があった。平安京に遷都した桓武天皇は天皇による政治システムを構築せんとし、そのため征東(征夷)を何度も繰り返した。また、政治システムは遣唐使によってもたらされた唐の政治システムを日本流にアレンジして作りだそうとした。
そうして天皇中心の政治システムができあがっていく。父から子へ天皇の座が引き継がれ、天皇を中心とする政治システムが盤石なものになると思いきや、すでにそこに脆さの芽が生まれる。それは、幼帝の誕生と、幼帝にかわって政を摂る摂政の誕生である。天皇は機関であり、天皇には外交等による決定権が残されていたが、天皇は政治機関の一部であり、日本の象徴としての色合いを強めていく。
そう考えると、平安時代に確立された政治システムは、現代の日本にまで脈々と引き継がれていく。
そして、この本のもうひとつの重要な指摘は、平将門の乱が武士を誕生させた、というものである。しかも、それは乱を起こした将門が武士の誕生ではなく、その乱を鎮めた平貞盛と源経基、この二人の家系が、「武家」としての役割を担っていく。
平安時代は400年という長き時代だが、その早い段階から平安時代の終焉の芽が生まれていたというのは興味深い。
![]() | ![]() | 平安京遷都〈シリーズ 日本古代史 5〉 (岩波新書)
著者:川尻 秋生 |
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