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2011年7月 5日 (火)

『英雄の書』 (宮部みゆき著)  勝利とか成功だとか正義だとか、理想の自分だとか、そういう物語を弔って、自分の物語を紡ぐことが大切

宮部みゆきが戻ってきた、というのが私の最初の感想。「宮部みゆき、最大の問題作にして、究極の破戒作」という宣伝文句から、嫌な作品ではないかと懸念していたのだが、久々に私が好きだった頃の宮部みゆきの作品に触れたような気持ちだった。

この物語の主人公は、森崎友理子という小学生。彼女の兄で中学生の大樹がクラスメートを殺傷し姿を消すという衝撃的な事件が起き、彼女の生活が一変する。

罪と罰と救済。かって、宮部みゆきは、罪を問われることも罰を受けることもなく、英雄を気どった犯罪者を描いた。そういう悪意の前で、決して救済されることにないひとびとを描いた。その理不尽さに彼女は囚われ、そういう物語を数多く描いた。そして、私は、そういう物語を好きになることができなかった。この始まりから、最近の宮部作品のようなやるせない物語になっていくのかと思いきや、物語は私の予想を裏切っていく。

友理子が一冊の本に出会ったことから、彼女は兄を探す旅に出る。ここから先はファンタジーの世界なのだが、この世界には救済などないのだから、それはファンタジーの世界で物語を進めるしかないのだろう。(最後にこの物語はこの世界に戻るのだが、、、)ここから先は、テレビゲームのRPGのような展開なのだが、彼女が最後に辿り着いたのは、勝利でも成功でも正義なく、ただ、弔うことだった。

イジメという輪から抜け出そうとした者は英雄であったのだろうか。例え英雄になろうとしたとしても、英雄になろうとした時点で彼は闇に囚われてしまったに違いない。今のこの国の内閣総理大臣は後世に名を残すことを第一義に振る舞っているようだが、そういう思い自体が愚かで、汚らわしいものであることに当の本人が気づいていない。英雄とはなるべくしてなるものではない。今、偉人と呼ばれている人たちも生きているうちは自分は後世に語り継がれるような偉人になろうとして努力したりしたのではないだろう。

勝利とか成功だとか正義だとか、理想の自分などというものを思い描くのもまさに本末転倒な考えだ。物語は自分の生きてきた過去に生まれるのであって、物語は自分の未来に描くものではない。そういう「あるべき物語」は、実は自分の物語ではなく、どこかにすでにあった物語の真似ごとでしかない。

そして、勝利とか成功だとか正義だとか、理想の自分だとか、そういう物語を弔って、自分の物語を紡ぐことは作家だけの仕事ではない。

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