『先送りできない日本 ”第二の焼け跡”からの再出発』(池上彰著) 「いい質問ですねぇ」が出るような思考こそが大切なのだ
テレビの仕事から身を引いてしまった池上さんの本。池上さんの主戦場は出版になるのだろうか。私は池上さんは本のひとではなく、テレビのひとだと思いますけどね。
震災の起きる前から日本はいろいろな面で行き詰っていた。そして、震災が起きてしまって、なおさら、日本は課題の先送りが許されなくなった、というのが池上さんの主張である。
グローバル競争、TPPと日本の農業・食糧問題、日本の開国、中国やインドとのつきあい方、日本のものづくりを再生、など、池上さんが問題を提起していく。国際社会の中で、このまま日本が問題解決を先延ばししていけば、結局、日本だけが取り残されますよ、と池上さんは言う。
でも、池上さんが最後に言いたいことは、「これ以上、増税を先送りできませんよ」である。この点については私は大いにガッカリした。政府・与党は消費税を上げようと動いているが、多くの被災者が生活を再建できていない今、国民からまんべんなく税収できる逆進性の高い税を導入しようとするのは、火事場泥棒と同じである。
この本で一番面白いのは、あとがきであろう。「いい質問ですねぇ」は池上さんの口癖なのだが、この「いい質問ですねぇ」が出るような思考こそが大切なのだ、と。 「いい質問ですねぇ」が素晴らしい解決策を導き出すかもしれない。今や、誰かの真似をすれば上手くいく、という状況ではない。ましてや、身を隠して嵐が過ぎ去るのを何もせずじっとしているだけで万事解決、などという甘い状況ではない。答えを導きだすためには、まずは問題を提起することだ。
いい加減に、日本人は「教えて、池上さん」という誰か優れたひとに依存する体質を改めないといけない。ここ数か月の政治の迷走ぶりは、政府や政治家は信頼できない、ということを強く印象づけた。これからは、「自分たちでしっかり考えて、しっかりとした行動しなきゃ」である。
![]() | ![]() | 先送りできない日本 ”第二の焼け跡”からの再出発 (角川oneテーマ21)
著者:池上 彰 |
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