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2011年5月12日 (木)

『中国人は本当にそんなに日本人が嫌いなのか』(加藤嘉一著) 茨の道だとは思うが、著者が日本と中国との架け橋になりたい、という志をくじけずに持ち続けることを願う

26歳の若者による中国論。著者は中国ではその言動が注目されている有名人。胡錦濤主席にも意見を求められたこともあると言う。彼の言い方を使うと彼が「ウォッチ」した日本と中国の人や社会を比較しながら論じている。彼は在中国でフィールドで活躍しており、日本と中国との架け橋になりたいという志を持っているようだ。

彼の中国論ははっきり言って「若い」。彼がウォッチした北京大学の学生や彼がウォッチした都市等、精いっぱいウォッチしたものをまとめているのは判る。しかし、例えば彼が第一章で描く架空の日本の新入社員・鈴木隆行の一日とか、はっきり言って、かなりステレオタイプで、今どき、こんな新入社員はいない(とキッパリ断言できる)。第二章は恋愛観についてウォッチしているが、日本と中国の恋愛観の違いというよりも、彼自身の恋愛観でしかない。第四章のどうして中国人は値切るのか、ということについては結論すらない。

と、ダメ出ししてしまったが、私は著者を前向きには評価したい。若い彼が頼るのは彼がウォッチしてきたひとや風景、都市であり、彼の生い立ちである。そういう意味で彼は精いっぱい、全身全霊をかけて言動していると言える。著者が若いなりに頑張っているのは伝わってくる。

私は中国で、のべ半年ほど仕事をしたことがあるが、中国人の公共の場でのマナーの悪さには閉口したものだ。信号は守らない、バスの乗り降りも降りるひとがいるのに無理矢理乗りこむ(もちろん列を作らない)。著者はこの点について中国人は公共の場は競争の場であり、出し抜かれないようにするからだと言う。なるほど、と思う。中国は今、自由よりも経済発展を優先していると言う。なるほど、と思う。経済発展のために自由を犠牲にしてもなんとも思わない。なるほど、と思う。

中国で享受できる自由は、「中国共産党が担保する自由」である。「中国共産党が担保する自由」から逸脱すると、彼は中国社会から文字通り「抹殺」される。そんな言論の自由の中で、著者は言動していかなくてはならない。毎日が綱渡りだろう。著者は私たち日本人が想像できない重圧の中で言論している。これはすごいことだ。繰り返すが、「中国共産党が担保する自由」から逸脱すると、彼は中国社会から文字通り「抹殺」されるのだから。

私は日本人と中国人が相互理解の上に信頼関係を築いていければ素晴らしいと思う。私は著者が日本と中国との架け橋になりたい、という志をくじけずに持ち続けることを願う。それが困難を伴うものであることを想像できるから、なおさらそう願う。

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