『大局観 自分と闘って負けない心』(羽生善治著) 突き詰めると、”人生は突き詰めてはいけない”となる
私は小学生、中学生の頃はよく将棋で遊んでいた。将棋は父や弟とのコミュニケーションツールでもあったのだ。しかし、将棋の駒を触らなくなって久しい。将棋は9×9=81マスの盤上の世界がすべてである。チェスが盤上からどんどん駒が減っていくゲームに対し、取った相手の駒を自分の駒として使える、というのも良い。世界のすべてが盤上にある。
将棋は読み合いのゲームとも呼ばれる。プロの棋士は短い時間の中で何十手先、何百手先まで読むのだろうし、また、短い時間の中で、何十通り、何百通り、何千通りの展開を読むのだろう。
しかし、選択肢が多ければ多いほど、そこには迷いが生じるであろうし、可能性が高ければ高いほど、そこには落とし穴があるかもしれないし、ミスを犯しやすいとも言える。先が読めれば読めるほど、むしろ身動きが取れなくなってしまうかもしれない。
大局観とは、そういう先読みをする力ではなく、盤上を眺めた瞬間に、そういう先の展開を含めて状況を見通す力だと思う。
この本は、最後の最後に名文がある。
「私はこれまで、何と闘うという目標を立ててやってきていない。
信じていただけないと思うが、常に無計画、他力志向である。
突き詰めると『結論なし』となる。人生は突き詰めてはいけないと思う。何のために闘うのかは、七十歳になってからじっくり考えたいと思う。」
将棋ファン、羽生ファンは、著者の生涯現役宣言と捉えるかもしれない。私は”人生は突き詰めてはいけない”という部分に惹かれる。
![]() | ![]() | 大局観 自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21)
著者:羽生 善治 |
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