『人生を豊かに歩むために大切なこと どうでもいいこと』(フランソワ・デュボワ著) まずは、「みんなが」という言い回しを止めよう
著者はフランス人音楽家で、日本の大学でキャリアマネージメントを教えている。また中国武術にも通じている。そんな彼が日本人をどう観ているのか。
私は武術家というものが大嫌いだ。著者は自らの武術修行を至上の経験のように語っているが、この部分は私は読み飛ばし。その部分を割り引いても、この本はいろいろなエッセンスを詰め込んでいる。
著者の疑問は、「日本若者たちは自分の人生を生きていないのではないか」というものがスタート地点になっている。著者の目には日本の若者たちは自分自身で納得して人生を歩んでいないように見える。そして、その理由は「自分の感覚以外のもの」=「社会が作り上げた『形』」に極めて強い影響を受けているからだ。一時期流行したKY(空気が読めない)だとか、ひとりで食事をする姿をひとに見られたくないのでトイレで食事をするなどといった行為、結婚しなければと婚活に励む姿、それらは、みんな、「自分の外」が自分に強制しているからで、「自分の内」なる声に従って行っていることではないのではないか。著者は、この「自分の内」なる声に従うことの大切さを繰り返し訴える。
その第一歩が、「みんなが」という言い回しを止めることかもしれない。「みんながそう言っているから」「みんながそうしているから」「みんなに迷惑をかけたくないから」といって、結局、不本意ながら「自分の外」に自分の価値観や生き方を委ねてしまってはいないだろうか。
実は、「自分」というものと向き合うのは案外しんどいのだ。「みんな」に委ねてしまう方が断然ラクなのである。ひとは誰も、よりよく生きる方向に向かうるチカラを持っている。しかし、「自分」というものに向き合わない限り、「自分」の流れには乗れない。それを妨げているのが「みんなが」「みんなが」という「自分の外」の価値観だ。
勘違いしてはいけないのだが、「自分」らしくは、自分勝手に、でも、自分さえよければ、でも、自分のために、でさえもない。仕事は他のひとのためにするものだ。自分のキャリアのためにするものではない。他人のために誠心誠意勤めることが、巡り巡って自分のためになるのが仕事である。10年後、20年後に夢を持ったり、不安を抱えるよりも、目の前の仕事に注力していくことが、10年後、20年後の夢につながっていく。
そのためには、苦しいかもしれないが、「自分の内」なる声に耳を傾けること。そして、その声に従って自分にウソをつかずに自分が正しいと思うことを続けていくことが大切だ。
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著者:フランソワ・デュボワ |
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