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2011年2月 3日 (木)

『父と娘の往復書簡』(松本幸四郎、松たか子著)  親が子に残すのは生物としての遺伝子だけではない。親の生きざまこそが、子に贈る最大のギフトなのだ

歌舞伎役者・松本幸四郎、女優・松たか子の親子による公開された手紙のやりとり。それは同時に、父・藤間昭暁、子・藤間隆子(結婚して佐橋隆子)との手紙のやりとりでもある。この本の売り文句は、この手紙のやりとりが嫁ぐ娘のに向けた父の思い、というものに収斂されていく、といったものになっているが、決してそうではない。

梨園の役者とその娘。娘は誰に強制されるでもなく、彼女もまた役者の道を歩み始める。彼女は父親の役と格闘する姿を目の当たりにしながら育ち、それを受け継いでいこうとするかのようでもある。

父と娘は、仲の良い親子のようにも見えるが、独特の距離感がある。それは同じ役者どうし、ということがあるだろう。父は娘の成長が嬉しく、時に叱咤激励する。成長した娘は、父にとっては好敵手でもある。こういう親子関係というのはなかなか得難いものだ。梨園の家に生まれた者の宿命とも言える。父がその宿命と格闘してきたように、娘もまた格闘している。そういう中で、高麗屋の血は引き継がれていく。

これは、子の親離れ、親の子離れ、のドキュメントとしても読める。娘が嫁ぐからではない。娘にとって役者として成長していくことが親離れであり、人生のまとめに入ったということが親の子離れである。親が子に残すのは生物学的な遺伝子だけではない。親の生きざまこそが、子に贈る最大のギフトなのだと思う。

「一体狂気とは何だ? 現実のみを追って夢をもたぬのも狂気かもしれぬ。夢におぼれて現実をみないのも狂気かもしれぬ。なかでも最も憎むべき狂気は、ありのままの人生に折合をつけてあるべき姿のために戦わぬことだ」

松本幸四郎という役者も松たか子という役者も常に役と格闘し続けている。

父と娘の往復書簡 (文春文庫)Book父と娘の往復書簡 (文春文庫)

著者:松本 幸四郎,松 たか子
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