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2011年2月28日 (月)

『「古事記」神話の謎を解く―かくされた裏面』(西條勉著) 「日本」という新しい国の要請が「古事記」という新しい神話を編み出した

「日本」という新しい国が生まれたとき、その時代の要請として誕生したのが「古事記」である。この本が面白いのは、「古事記」は「日本」という国が生まれる前から土着としてあった「神話」を単に寄せ集めたものではなく、それらを解体し、再構築し、そして新しく創作した「神話」を織り交ぜて編集されたものである。「日本」という新しい国が誕生するにあたって、その誕生の物語としての「神話」をでっち上げる必要があったのだ。

導入部のオオクニヌシの話から面白い。土着の神話では、必ずオオクニヌシとペアであった”スクナヒコナ”のコンビを解消させ、それどころか、”スクナヒコナ”を名前さえ知られていない無名の神に貶める。何故そのようなことをしたかというと、土着の神を否定し、「日本」という国の誕生に相応しい、土着ではない、官僚たちが作りだした新しい神話である、イザナギ・イザナミの国作りの神話を「日本」の神話として正規採用するためである。

この本は、そうして生まれた新しい「日本」の「神話」のウラを読もうとする。

著者の視点はかなりクールである。「古事記」を物語として捉えようとすると、登場人物たちの感情の動きに着目した読み方をしてしまうのだが、そういうブンガク的な読み方を一切しない。何故そのような神が登場するのか、何故その神はそういう役割を担ったのか、と、常に「日本」という国が何故、何を要請したのかを読み解こうとする。
また、「日本書紀」や「古事記」に登場する神々を実存した(とされる)天皇の化身(アバター)としても読むこともしない。あくまで、「日本」という新しい国が誕生するにあたって、「日本」という国がどういう「神話」を要請したのか、という視点で、この「古事記」というものを読み解こうとしている。

「古事記」奈良時代の官僚たちがでっち上げたものはブンガクではないと言わんばかりの爽快さだ。

「古事記」にはいろいろな側面がある。それが「日本」という新しい国が要請した「神話」であるのと同時に、「日本」という新しい国が持つべき”文字”というものを編み出してもいる。土着の話し言葉に中国の漢字を無理矢理に当てはめていく、という作業を「古事記」で試まれている。それは、漢字の訓読みを生み出し、送り仮名の原型を作りだし、「の」や「を」といった助詞を発明し、「日本語」の原型を作りだした。新しい国には新しい言葉が必要だったのだ。

「古事記」は、生命の誕生から始まり、生と死を分かち、スナノオを根の国に追放することにより土着の生死観を水平方向から垂直方向に転換させ、オオクニヌシは天孫に国譲りをするために編み出される。すべては国譲りされた天孫の正当性を当るためにお膳立てされた「神話」である。

「日本」という国は、「古事記」という発明に始まった、そしてその根底に流れる思想は、今もなお「日本」という国を呪縛しているようでもある。私はそれを否定するつもりはない。「日本」という国はそういう国だとしっかり認識することがスタートだと思うからだ。

Book「古事記」神話の謎を解く―かくされた裏面 (中公新書 2095)

著者:西條 勉
販売元:中央公論新社
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