『「事務ミス」をナメるな! 』(中田亨著) 「ミス」は起こりうる。そうであれば、「手遅れ」にならない状況をつくらないようにすることが大切だ
「クリック1つで大損失」。コンピュータシステムの発達とともに、その利用者の「うっかり」が大損失や大事故につながるようになってしまった。そういうことを発生させないように、操作を惑わすような画面や入力間違いを誘うようなフォームをつくらないようにすることが、システム設計者の腕の見せどころにもなってきている。
ひとは能力がないからミスをするのではない。あいまいさを一瞬で取り除いたり、直感的に判断したり、繰り返しの慣れがミスを引き起こしたりする。むしろ「有能な」ひとがミスをするのである。ベテランが初歩的なミスを犯してしまうのも熟練だからむしろ、思い込みやノーチェックで作業してしまうことがあるからだ。
ひとことで「ミス」というが仕事には「不完全性」や「不確かさ」がつきものである。だから、「ミス」をなくすことはできない。「ミス」をなくすのではなく、「不確かさ」の幅を狭める、「不確かな」状況が起きたときにどうするかを決めておく、といったことが大切である。「ミス」した個人を責めても何の対策にもならない。
「ミス」は起こりうるもの。そうであれば、「ミス」が起きても「後戻りができない」という状況を作りださない工夫をすべきだ。「手遅れ」にならないうちに異常を検知するしくみを作って、影響範囲を特定し、やりなおしが効くようにしておけば良い。工場では「トレーサビリティ」を重視しているが、そうやって追跡可能にしておけば、やりなおしができやすくなる。
「ミス」は起こりうる、ということを前提に考えれば、今は確実に作業をやり抜く能力よりも、異常を検知し最優先で取り組める能力が求められる。そしてそれは個人の頑張りに依存するのではダメで、「しくみ」にしていく。この本の後半ではそういった工夫を事例をひきながら紹介している。
![]() | ![]() | 「事務ミス」をナメるな! (光文社新書)
著者:中田亨 |
それにしても、あのカフカがヘルメットを普及させた、というのには驚いたなあ。
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