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2011年1月 6日 (木)

『モーニング Mourning』(小路幸也著) 過去に縛られるのではなく、過去を解き放つことによって未来が始まる

親友の葬儀のため、二十数年ぶりに福岡に集まった大学時代の仲間4人。葬儀を終え、車で空港に向かうのだが、そのうちの一人が、「この車でひとりで帰って、自殺する」と言いだす。残りの3人は、彼の自殺を思いとどまらせるために、飛行機には乗らず、車でそれぞれの生活の場に帰ることにする。その道中で、彼が自殺すると言いだした原因を探るうち、彼らは、一緒に過ごしたあの頃に思いを馳せる。

自殺したいのなら、誰にも言わずこっそりとすれば良いのだが、わざわざ自殺するなどと言いだし、しかも、「自殺する理由がわかったら自殺を止める」と言ったところから、まあ、これがどういうことなのか、わかってしまったのだが、それでも、福岡から横浜までの長距離ドライブを一緒に楽しめた。

青春のある時期、彼らのように気のおけない仲間が一緒に過ごす、ということは彼らの生活を豊かにしただろう。そして、その仲間のうちのひとりを喪ったことにより、彼らはそれを思い出す。Mourningというタイトルのとおり、それは喪の仕事であったのだろう。

こういう美しい物語には、当然のように年上の美女が登場するものだ。この物語も例外ではない。茜さんというこの物語のヒロインは、彼らにとって、失うことによって永遠になったしまった存在だ。そして、それは、輝ける過去の象徴でもある。

私は、「あの頃は良かった」的な物語は嫌いである。「あの頃は良かった」は、過去に縛られることであり、未来から目をそむけることに結びつくからだ。しかし、一方でこういう物語を読むと、輝かしい未来は輝かしい過去から作られる、ということもあるかも、と思えてしまう。そしてそれは過去に縛られるのではなく、過去を解き放つことから始まるのかもしれない。

そして、モーニングは、morningでもある。日はまた昇る。そして人生は続いていく。小路幸也の描く物語は、いつも最後に「めでたしめでたし」という言葉を入れたいくらいに後味が良い。

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著者:小路 幸也
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