『GOSICKsIII―ゴシックエス・秋の花の思い出―』(桜庭一樹著) ”花”にまつわる謎についての物語。いずれも裏テーマとして”別れ”というものを孕んでいる
「ベルゼブブの頭蓋」と呼ばれる修道院から脱出し、暴走する殺人列車「夜行列車オールド・マズカレード号」から逃れ、懐かしい学園に戻ったヴィクトリカと一弥に訪れたつかの間の休息。季節は、秋。これは、”花”にまつわる謎についての物語である。
「純潔」:白い薔薇のおはなし
フランス革命で断頭台に若い命を絶たれた愛し合うふたり。そして断頭台に捧げられた白い薔薇。白い薔薇は純潔の証し。歴史の闇に消えた、純愛の物語。
「永遠」:紫のチューリップのおはなし
史上最初のバブルとも呼ばれる、チューリップの球根をめぐるお話。紫のチューリップの球根は入手不可能とされ、高値で取引された。そうしてバブルが生まれ、バブルがはじけ、また、別のバブルが生まれる。ひとの欲望はキリがない。永遠に続く。そして、バブルを上手く売り抜けて大金を儲けようとする輩はいつの時代にもいる。
「幻惑」:黒いマンドラゴラのおはなし
中国の皇帝の影となり、皇帝を支えた女武将のお話。呪いと呼ばれるものも後の世から見れば呪いでもなんでもないのかもしれない。
「思い出」:黄のエーデルワイスのおはなし
エーデルワイスの種が大西洋を渡り、新大陸の広大な荒野にその黄色の花を咲かせる。それは花ビジネスというもののように見えて、実は”目印”だったとは。
いずれの物語も裏テーマとして”別れ”というものをはらんでいる。
最後の「花びらと梟」は、ヴィクトリカに会おうとして迷路に迷い込んだアブリルのお話。この物語の花は”デイジー”。灰色狼の知恵の泉はヴィクトリカだけではない。すべては迷路の中。真実は梟だけが知っている。
エピローグでは、今後起こりうる展開が語られる。政争の具としてヴィクトリカを動かしたいものたちに対して、幼いふたりがどう立ち向かっていくのか。今後の展開も楽しみだ。
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著者:桜庭 一樹 |
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