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2010年12月30日 (木)

2010年の本ベスト5。マグロ漁師の言葉はお利口さんの書く自己啓発本よりずっと重みと深みがあった

2010年の年間ベストを選ぶシリーズ最後は、本。

1.『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』(齊藤正明)

面白いタイトルに惹かれて買って読んでみたら、面白かった。会社の命令でマグロ漁船に乗るハメになってしまった著者は、船酔いと戦いつつ、携帯もメールもない、コンビニも病院もない、船長20メートルの小さな世界で、様々なことを学んでいく。
海の上は死と背中合わせの世界でもある。そんな世界で生きる漁師たちの言葉は、お利口さんの書く自己啓発本よりもずっと重みと深みがある。

マグロ漁師は言う。

「『努力』っちゆー言葉には、どっか『結果』という見返りを期待しちょるように聞こえるの。でもの、努力はたいてい報われんのぞ。最初から報われる期待をして努力すると、『努力したのに・・・・・・』と、すぐにあきらめよる」

「でもの、いくら自分を磨いたって、人間できないことばかりぞ。さっき言ったとおり、おいどーも海に出るとできないことばかりど。『完璧』を目指すほど、自分にできないところが目立って落ち込む。結果、完璧とはより遠くなるんど」

自分はスーパーマンではない、この単純な真実と向き合う強さをもっているひとこそが、幸せになれると私は思う。

会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ (マイコミ新書)Book会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ (マイコミ新書)


著者:齊藤 正明

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2.『日本辺境論』(内田樹)

日本人ほど「日本人とは何か」を問い続けていきた民族はこの地球上でもかなりマレであるし、私たちはそれを問い続けるのだろう。「世界標準」とか軍隊や核兵器をもった「ふつうの国」を目指すという不毛な努力をするよりは、日本や日本人は「辺境」「辺境人」であることを自覚して、「辺境」「辺境人」だからこそできることをしていこう、という姿勢は正しいと思う。

日本辺境論 (新潮新書)Book日本辺境論 (新潮新書)


著者:内田 樹

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3.『これからの「正義」の話をしよう』(マイケル・サンデル)

ひとは誰も幸せになりたいと思う。そのために、正しいこと、より良いことをしようとする。しかし、どう頑張ってもそれができないことが多いし、そう思うようにはいかない、ままならないのがこの世の中だ。しかし、だからこそ、ひとは、正しいこと、より良いことを為そうとしなければならない。それがこの世界を正しく、より良くしていく、唯一の方法である。

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学Bookこれからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学


著者:マイケル・サンデル,Michael J. Sandel

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4.『赤朽葉家の伝説』(桜庭一樹)

戦争に負けた日本人は、より良い明日を信じて、”だんだん”を登り続けた。明日の方がより良くなるだろう、自分の子供たちの生きる世界の方が今よりよくなるだろう。そうやって生きることは決して無意味なことではないし、そういう願いが、世代をつないでいく。ひとは生きている時代を選べない。だからある意味、開き直って、今という時代を生きていけばよい。

赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)Book赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)


著者:桜庭 一樹

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5.『空白の叫び(上・中・下)』(貫井徳郎)

貫井徳郎作品は、正直、読むのがしんどいが、これはかなりしんどかった(しかも、超長編)。この作品は殺人を犯してしまった少年たちの者の物語なのだが、贖罪もないまま更生した彼らを待っていたのは、世の恨みや妬みである。天網恢恢疎にして漏らさず、と言うが、彼らを見ているのは天ではない、人である。人の世はかくも恐ろしい。

空白の叫び〈上〉 (文春文庫)Book空白の叫び〈上〉 (文春文庫)


著者:貫井 徳郎

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2010年は”人生の大義”だとか”小成は大成を妨げる”といった謳い文句の本を読んで、それって違うんじゃないの、と強く思った年でもあった。
自分が副社長を務めるベンチャー会社を倒産寸前で逃げ出して次のネットビジネスで大儲け、がはたして大義なのか。小義を捨てて大義をとったとでも言いたいのだろうか。しかし、私はその小義すら果すことができずに大義大義と言いたてるひとを信用できない。
確かに小さな成功に満足して小じんまりしてしまうのはよろしくないと思うが、武術家でもないひとたちにとって大切なのは日常の中での小さな成功の積み重ねではないだろうか。「やればできる」を支えるのは「やればできた」の積み重ねではないだろうか。

何も大きいことを言い立てる必要はない。例えそれが小さなことでも、自分の目の前にある仕事に真摯に向き合って、それをひとつひとつ達成していけば自ずと道は開けていくのではないか。そんなことを自分に言い聞かせながら、歩んできた2010年だった。

このブログは2011年も続きます(たぶん)。今後ともご贔屓に。

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