『身体知―カラダをちゃんと使うと幸せがやってくる』(内田樹、三砂ちづる著) 身体感覚ゼロの私には、今さらそんなこと言われてもなあ、というのが正直な感想
この本をひとことで言うと、「出産と武道」。結婚や出産、子育ては女性の社会進出の妨げ、頭でっかちでなんでも数値化してものごとを図る、といった風潮に、異議を唱える本である。
かくいう私は、絶望的なほど、身体感覚がない。まず、呼吸が整っていない。だから、感情の起伏が激しい。また、ひととの間合いの取り方がよくわからない。私はひとが多いところが全くダメである。ひとが多いだけで軽いパニックになる(だから、満員電車を避けるために早起きする)。ひととの距離が近かすぎだり、むやみに触られるのもダメである。私はもちろん、出産はできないが、かといって、武道をするのも御免こうむりたい。組みあいなど、フィジカルな接触は
そういう私は、武道や舞踏をしているひとが身体感覚に優れていることはわかるが、その優位性だけを言いたてられることには嫌悪すら感じる。私くらいの年になると、今さら、「身体知」を取り戻せ、と言われても、無理である。無理なことを勧められても、御免こうむる。
この本は、言っていることはわかるのだけれど、今さらそんなこと言われてもなあ、というのが正直な感想だ。
それでも、最終章は「カラダを取り戻す方法」で、何かヒントはないのだろうか。そのキーワードは、「妥協」と「許容」ではなかろうか。異質なものに対して、それを受け入れるとき、自意識が強すぎると「妥協」になる。つまりは、嫌だけれど、しょうがない、だ。「許容」というのは、しょうがないなあ、と思いつつも、笑って許せる、というような感覚だろう。私はまだまだいろいろなものに対して「しょうがななあ」と言えない性格なのだ。「しょうがないなあ」と言えるのがオトナと言うのなら、私はまだまだオトナになりきれていないのだろう。
まあ、それなら、それで良いけどね。
![]() | ![]() | 身体知―カラダをちゃんと使うと幸せがやってくる (講談社プラスアルファ文庫)
著者:内田 樹,三砂 ちづる |
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