『群れのルール 群衆の叡智を賢く活用する方法』(ピーター・ミラー著) ミツバチと人間、本当はどっちが賢いのだろうか、真剣に考えてしまった
この本は、アリ、ミツバチ、シロアリ、鳥、バッタ、といった生物の生態から、「群れ」が「個」のふるまいの総和以上の成果を生み出す例をあげていく。それは、人間が作り出す組織よりも、より柔軟性に富み、シンプルな法則によって、不確実さや複雑さ、変化にも驚くほど巧みに対応している。人間が作り出す組織がいかに複雑で硬直化してしまっているか、それによって、脆く、変化に上手く対応できないか、が際立ってしまう。
「群れ」、群れるという言葉は、あまり良い印象を与えない。チャップリンの映画のせいか、群れをなした組織の中では個人は歯車になってしまう、埋没してしまう、という怖れを私たちはついつい思いがちだ。ひとはどこか一匹オオカミに憧れるものだ。
しかし、残念ながら、私たちは、虫や鳥たちに学ぶことが多くありそうだ。
アリ:ある程度の役割分担があるものの、個々の動きがてんでバラバラである。しかし、組織全体としては上手く機能している。ある程度の設計図はあるのだろうが、行き当たりばったりとも言えるほど状況に応じたふるまいをとることによって自己組織化ができている
ミツバチ:新しい棲みかを見つけるとき、偵察に行ったミツバチたちは、あっちが良い、こっちが良い、と多様な意見を出し合う。しかし、多様な意見は収斂し、ひとつの意見にまとまっていく。そして、それは組織としてベストの意見にまとまる。
面白いのは、偵察にいったミツバチの意見に、他のミツバチがどのように賛同していくか、だ。彼らは、「実際に行ってみて、自分の目で確かめて、自分の意見を他者に伝える」ことをしているのだ。彼らは、空気を読んだり、勝ち馬に乗ろうとしたり、マスコミの恣意的な報道やデマに惑わされることはない。人間とミツバチ、どっちが本当にかしこいのだろう、とつい考えてしまった。
鳥:鳥たちは、自分の周り6,7羽の仲間と情報を交換する。それによって、群れや自分に迫ってくる危険を察知する。twitterでフォロワーが何万人いたとしても、本当に自分にとって必要な情報を交換できるのは、6,7人じゃないかしら。
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著者:ピーター・ミラー |
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