『宇宙は何でできているのか』(村山斉著) かって宇宙の起源や宇宙の法則を解き明かすのは哲学の役目だったが、今やその役目は科学が担っている
宇宙と素粒子。とてつもなく大きなものと、もっとも小さい素粒子。その両極にあるものが、実はつながっているという驚き。冒頭から、『ウロボロスの蛇』の図が出てくるが、科学的というかむしろ、哲学的とも、宗教的とも言えるような図が、実はとっても科学的であるという不思議。
「物質を作る最小単位の粒子である素粒子。その素粒子の種類や素粒子に働く力の法則が分かれば宇宙の成り立ちが分かる。」逆に、「宇宙の現象を観測することで素粒子の謎も明らかになる。」まさに、自分の尻尾に食いついた蛇のごとく、頭を観ようとすると尻尾が見えるし、尻尾を観ようとすると頭が見える。面白い。
本書は、宇宙から素粒子まで、とにかくわかりやすく解説しようとした本である。だから、「この理論は難しすぎるからこういう理論があります、と覚えておいてください」とか「この理論を解説しようとすると難しい数式になるのでやめます」とか、平気で言う。確かに、ひとつひとつの段階をすべて理解しなければ、次に進めない、ということはない。あまりひとつひとつの細かいことに拘らず、全体を俯瞰できるのが良い。
ただ、やはり、難しすぎる。
でも、まだまだ宇宙は謎ばかり、ということが良くわかる。宇宙の大部分を構成している”暗黒物質”。宇宙はアインシュタインの理論を越えて広がり続けている。なんだかわくわくする。かって、宇宙の起源とか宇宙の法則とかを解き明かすのは哲学の役目だったが、今やその役目は科学に移りつつあるようだ。
科学者はある意味、予言者である。「今は解き明かされていないが、こうあるはずだ。こうあらないとつじつまが合わない。」という予言が、現実になっていくのが科学の世界のようだ。ノーベル賞をとったひとたちは、後にその理論が証明されるという、いわば予言者が多い。
こういう研究を日本で続けていく意義が大きい。2番じゃダメなんですか、みたいな、くだらない事業仕分けで予算を削られないことを切に願う。
![]() | ![]() | 宇宙は何でできているのか (幻冬舎新書)
著者:村山 斉 |
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