『カツラ美容室別室』(山崎ナオコーラ著) 「疲れる女といるよりも、アパートで牛乳を温める方がいい。」なんて、残酷で真実なことばだろう
主人公が引っ越してきた高円寺にある、『カツラ美容室別室』。別室というのは、本店が九州の小倉にあるからで、しかし、この美容室の一番の不思議は、店長の桂さんがカツラをかぶっているという、笑えるが笑ってはならない事実。
この店で、主人公はエリちゃんという女性と出会うのだが、しかし、その関係は恋愛には向かわない。花見に行き、美術館に行き、映画を観に行き、主人公の部屋にお泊まりもあるが、しかし、「つきあってください」の一言が言えなかったばっかりに、彼らは恋愛には進まない。
ひとと関わっていなければ、自分というものの輪郭があいまいになる。だから、ひとはひとを求めるが、しかし、そこには”ためらい”がある。「つきあってください」の一言が言えなかったばっかりに、ひととひととの関係は変わっていく。
いや、そもそも彼らの出会いから、恋愛に進むようなものではなかったのかもしれない。いや、恋愛に進んだかもしれないし、そうでなかったかもしれない。ひととひととの関係は、はっきりこうだと言えるようなものではなく、あいまいなものなのかもしれない。そして、そういうあいまいな関係の中にも、いや、そういう関係の中にこそ、ドラマが潜んでいるのかもしれない。
「疲れる女といるよりも、アパートで牛乳を温める方がいい。」
この物語の中で、一番残酷で真実なことばだ。ひとはひとを求めるが、しかし、ときには求めたくも求められたくないときもある。
ところで、この物語を映像化したときのキャスティングを考えてみました。
主人公: 松山ケンイチ
エリ:市川実日子
桂:田山涼成
梅田:オダギリジョー
桃井:谷村美月
いかがでしょうか。
![]() | ![]() | カツラ美容室別室 (河出文庫)
著者:山崎 ナオコーラ |
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