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2010年10月 4日 (月)

『赤朽葉家の伝説』(桜庭一樹著) 自分が生まれてきた時代がどんな時代であれ、その時代を精いっぱい生きる。そうするしかない

太平洋戦争終戦直後から、現代に至るまでの、女性三代の物語。

舞台は鳥取県紅緑村。鳥取県西部の山間の村で、赤朽葉家という古くからたたら→鉄鋼業を営んできた一族の女性たちが主人公である。

最初の主人公は、”辺境のひと”に置き去りにされ、紅緑村の若い夫婦に育てられた万葉。学校の勉強がからっきしダメで、文字が読めない万葉だが、旧家である赤朽葉家に嫁ぎ、”千里眼奥様”と呼ばれることになる。”千里眼奥様”は、義父や夫や息子の死を幻視してしまう。ときに、それは赤朽葉家を救うが、その運命を変えることはできない。

次の主人公は、万葉の娘で、丙午の女、毛鞠。レディースのリーダーとして中国地方を制覇し、やがて少女漫画家として大成する。その短い生涯を疾走した彼女は、死に見せられた女性でもあった。

最後の主人公は、毛毬の娘、瞳子。自由という名になるはずだった女性。彼女は定職についていない。所謂自分探しの真っ最中だ。そして、彼女のパートには、ちょっとしたミステリィ要素が盛り込まれている。

女性三代。戦争に負けた日本人は、より良い明日を信じて、”だんだん”を登り続けた。しかし、地球はまんまるで、”だんだん”を登っても、ぐるっと回って元の場所に。だからといって、この地球が”だんだん”のないつるつるの球体の方が良かったか、というと、そうではないだろう。

明日の方がより良くなるだろう、自分の子供たちの生きる世界の方が今よりよくなるだろう。そうやって生きることは決して無意味なことではないし、そういう願いが、世代をつないでいくのだと思う。

ひとは生きている時代を選べない。何故、こんな時代に生まれたのだろう、違う時代に生きたかったと願っても、その願いは叶うはずもない。そうであれば、自分が生まれてきた時代がどんな時代であれ、その時代を精いっぱい生きる、そうするしかないのではないだろうか。ある意味、開き直って、今という時代を生きていけばよい。
まだ”何者でもない”今の子供たちも、そうやって生きていけばよい。

赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)Book赤朽葉家の伝説 (創元推理文庫)

著者:桜庭 一樹
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ところで、私は、8年間、鳥取県西部のある町に住んでいた。そのため、この物語に出てくる景色というのを、かの地の景色に重ねて読むことができた。駅前の商店街のシャッター通りとか、懐かしく読ませてもらいました。

しかし、この物語の景色で、すっぽり抜け落ちているものがある。それは、大山(Mt.Daisen)である。鳥取県西部に住んでいると、否応なく、大山というのは意識せざるをえない、大きな存在である。しかし、この物語には、遠くの中国山脈は出てくるが、近くの大山は出てこない。これは、作者が意図的に、大山を消したのだろう。
大山を出してしまうと、”だんだん”が目立たなくなってしまうから。

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