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2010年10月25日 (月)

『三国志〈第5巻〉』 (宮城谷昌光著) 映画『レッドクリフ』の曹操しか知らないひとにこそ読んでほしい。曹操の見方が変わる本

宮城谷版『三国志』の文庫第5巻では、ついに曹操が天下をとるために動きだす。

『三国志』において、曹操は、”悪者”というイメージが定着している。それは、劉備=善、曹操=悪とコントラストをくっきりさせた方が、物語として面白い、ということだったのだろう。最近では、『レッドクリフ』という映画があり、この映画における曹操は、「敵将の妻に横恋慕して、100万の兵を失った愚か者」として描かれている。そもそもこの映画自体、ハリウッドのエンタテインメント映画であり、史実など全く無視なのだが、この映画でしか、曹操という人物を知らないひとにとっては、そういう印象しか残らない。

宮城谷版『三国志』の曹操は、曹操=悪というイメージでは全くない。よく天地人というが、曹操は、「天」と「人」を上手く使った人物であったのだろう。

「天」。すなわち、曹操は、機を逃さず、素早く決断し、素早く動く。敗れはしたものの董卓の軍に誰よりも先に挑んだのは曹操であったし、天子を奉じると決断すると、すぐに動く。天子を奉じることにより、曹操は諸侯よりも優位に立つことができた。
「人」。曹操の周りには優秀な人が集まる。曹操が乞うて人を集めたのだが、人というものは、徳がないと集まるものではない。ましてや、優秀な人材は、集まらない。曹操のもとに集まった人材は、”勝ち馬”に乗ったわけではない。第5巻の冒頭時点での最大勢力は、袁紹であり、曹操は袁紹と戦うことを恐れていた。
曹操の良いところは、集めてきた人材を、自分の好き嫌いに囚われず、適材適所に配することにある。そして、曹操はひとの意見をよく聴く。そして、自分が良い意見と思えば、それを容れる。自分に反対の意見にも耳を傾ける。だからこそ、曹操の周りに人材が集まり、そして離れない。

曹操の台頭とともに、呂布や袁術などが姿を消す。そして、ついに曹操は当時の最大勢力である袁紹に挑む。袁紹は、天地人のうち、「地」の利しか活かせない人物であった。機をみすみす見逃し、人の意見を全く聴かない。苦言を呈する良臣を遠ざけ、甘言を弄する悪臣を身近におく。かの「官渡の戦い」においても、決断が早く動く曹操と、みすみす機を逃がす袁紹では勝負は見えている。

さて、通常『三国志』で英雄とされる劉備はどうか? 曹操の恩を仇で返し、曹操に攻められれば、妻子や桃園で義兄弟の契りを結んだ義兄弟の関羽を置き去りにして、自分だけスタコラサッサと逃げる。逃げ足だけは速いが、とても徳のある人物には見えない。このひとは、人知を超越した”変人”であろう。最近の日本で言うと、小泉純一郎みたいなひとだ。ひとがなんと思おうと我関せず。でも、なにかしら期待を持たせる。

こういう”変人”が天下の一翼を担うことになるのだが、それは第六巻以降のお話である。

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著者:宮城谷 昌光
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