『Rのつく月には気をつけよう』(石持浅海著) ミステリィには、お酒と美味しい料理が良く似合う
ミステリィには、お酒と美味しい料理が良く似合う。
そこは場末のバー。マスターと中年3人組が美味しい肴や酒のうんちくを語りだす。過剰におりうんちくを語り終わったころ、マスターの目が怪しく光り、がそういえばこういう事件が、と話題を振る。事件を解決するのは、カウンターの奥で飲んでいた美人。おっと、これは鯨統一郎だった。失礼。失礼。
大学時代からの飲み仲間である、湯浅夏美と長江高明、熊井渚の三人は、不定期に長江の部屋に集まっては美味しい肴に酒を飲み交わす。彼らのルールは、誰かがゲストを連れてくること。気持ちよく酔いもまわり口が軽くなった頃、ゲストが語りだす謎を長江が解き明かす。
頭脳明晰で隙のないように見える長江をちょうこう→揚子江とあだなするあたり、なかなかセンスが良い。タイトル作である「Rのつく月には気をつけよう」はご察しのとおり、生牡蠣にまつわる話だが、先に挙げたバカミス作品とは違い、肴や酒のうんちくはほどほどで、謎解きもその場にいるひとたちが納得できるものであり、無理やり感はない。謎の解明とともにゲストは帰えるが、この飲み会は、なおも続く。
この物語の一番の謎は、実は熊井渚。ラストの飲み会の終わりには、ああ、そういことだったのね、と思わず納得してこの物語を読み終えることができる。
![]() | ![]() | Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)
著者:石持 浅海 |
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