『前方後円墳の世界』(広瀬和雄著) あなたの街の近くにも前方後円墳が。たまには古代の世界に思いをはせるのも良いかも
かって、伊丹空港を利用していたときに、飛行機の窓から、巨大な前方後円墳を観るのが楽しみだった。どうして、古代のひとたちは、こんなばかでかいお墓を作ったんだろうなあ、ととても不思議な気分になった。
この本は、その前方後円墳が造られた時代に思いを寄せるに十分な本である。
まず、プロローグで東京でぶらり散歩がてら見れる亀甲山古墳、多摩川台古墳群、野毛大塚古墳を紹介している。私の住んでいる川崎から多摩川を渡ったところにすぐ、前方後円墳があるんですね。
前方後円墳が造られた時代は、ほとんど文字が残っていない。なので、その当時のひとびとの生活や、その時代のひとびとが何を考えて生きていたかは、考古学に頼るしかない。何故、巨大な前方後円墳が造られたのか、何故、埴輪などの副葬品が祀られたのか、そして、何故、前方後円墳は、北海道、北東北、沖縄を除く日本各地につくられたのか。
とかく、古墳時代は、ヤマト朝廷が成立する全段階で、ヤマト朝廷が地方勢力を駆逐していった、と考えられがちだが、中央と地方の関係はどうも一筋縄ではいかないようだ。また、広い平野で広い耕作地を確保したら政治的に強かったとも言い難い。まだこの国の形が定まっていない時代は、面白い。
前方後円墳を作るのは、その当時はもちろん大事業だったわけだが、それは権力者がその権力を死後の世界にまで誇示しようとしたものではなかった。共同体のリーダーをその死後にカミとして祀ることにより豊穣を願う古代のひとたちの思い、共同体のソトに対しては、ばかでかい前方後円墳を見せることによって威圧するなど、古代人は決して未開とは言えない文化を持っていたことに驚かされる。
![]() | ![]() | 前方後円墳の世界 (岩波新書)
著者:広瀬 和雄 |
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