« 【本棚に残す3冊】 もし、あなたの本棚に橋本治の本が3冊しか残せないとしたら、あなたはどの本を残しますか? | トップページ | JR新橋駅はShimbashiと表記していますが、どうも違和感が。Shinbashiじゃダメなんですかね。 »

2010年9月 6日 (月)

『街場のメディア論』(内田樹著) 本とは贈り物であり、それに対する「ありがとう」、そこから生まれる「反対給与義務」が本の価値を創造する

「街場」シリーズの第4弾。アメリカ論、中国論、教育論に続いてメディア論である。そして、メディア論は、新書でお目見え。

第1講:キャリアは他人のためのもの
 「街場の教育論」からの引き続きなのか、教育、そしてキャリアについて。「他人のために働く」ことにより、自分の才能を開花することができる、という指摘は、若いひとたちにはぜひ耳を傾けて欲しい。
そして、これが、この本の伏線になっている。

第2講:マスメディアの嘘と演技
第3講:メディアと「クレーマー」
第4講:「正義」の暴走
 「知っているくせに知らないふりをして。イノセントに驚愕して見せる」メディアの罪について。NHKの21時代のニュースや、22時代のテレビ朝日のニュースのキャスターの態度がこれに当たるだろう。メディアはまず弱者の立場に立たなくてはならないが、弱者のフリをするのは罪である。
 そして、その態度は、メディアの言動を”名無し”にしてしまい、誰も責任をとる必要がなくなる。ゆえにメディアは時に暴走する。 

第5講:メディアと「変えないほうがよいもの」
 メディアにとって、社会制度が変わることは、その情報市場の価値が高まることであり、情報の売り手としては歓迎すべきである。ゆえに、医療改革だとか教育改革だとか、短期的に劇的に変えることには弊害がある制度にたいしても、メディアは変化を煽る。
 そのメディアは今、日本の総理大臣が変わるかもしれないことに怖れをなしている。これはまた、面白い状況だ。

第6講:読者はどこにいるのか
 「本を読みたい人」は減っていない。にも関わらず、出版が危機だとするのは、それは「読み手に対するレスペクトの欠如」だとする。出版が真に大事にすべきは「本を買う消費者」ではなく「本を読む読者」だ。今、電子書籍が立ち上がろうとしているが、電子書籍は、これから本を読むかもしれないひとまでを想定して、その利便性を提供していることが、既存の出版に対する優位性だとする。出版の本=商品とし、対価を支払わなければ読みたい本を読ませない、という姿勢は早晩立ち行かなくなると指摘する。

 また、この講では、自分の【書棚】に本を並べることにも言及している。本を読むひとは、自分の【書棚】というものを意識するものだ。

第7講:贈与経済と読書
第8講:わけのわからない未来へ
 この部分が、この本のウルトラCである。本とは贈り物であり、それに対する「ありがとう」という気持ち、そこから「反対付与義務」が本の価値を創造すると言う。本=商品を売る、消費者として本を買う、という流れでは、出版はこれからは成り立たない。より多くの「反対給与義務」を受け取るには、実は、本を読みたいひとにどんどん本を読んでもらって、消費者ではなく、読者を育てることこそ、有効なのだ。

街場のメディア論 (光文社新書)Book街場のメディア論 (光文社新書)

著者:内田 樹
販売元:光文社
発売日:2010/08/17
Amazon.co.jpで詳細を確認する

« 【本棚に残す3冊】 もし、あなたの本棚に橋本治の本が3冊しか残せないとしたら、あなたはどの本を残しますか? | トップページ | JR新橋駅はShimbashiと表記していますが、どうも違和感が。Shinbashiじゃダメなんですかね。 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

フォト

他のアカウント

2019年9月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          

気になる、気になる

  • ざっくばらん坊 on twitter
  • amazon
  • blogram
  • 人気ブログランキング
無料ブログはココログ