【本棚に残す3冊】 もし、あなたの本棚に橋本治の本が3冊しか残せないとしたら、あなたはどの本を残しますか?
この企画も【本棚に残す3冊】第7弾で、ついに最終回です。最後に取り上げる作家は、橋本治。橋本治の本で一番有名なのは『上司は思いつきでものを言う』でしょうが、敢えてそれを選んでません。。。
まずは、
『シンデレラボーイ シンデレラガール』
この本に出会えていなかったら、橋本治の本を読み続けることはなかったでしょう。この本の前半はウダウダと訳の分からないことをいってついには逆ギレしているのだが、打って変わって、後半は素晴らしい。
世界は誰が動かしているのか? 世界は誰も動かしていない。なぜなら、世界を動かせるのは君だけだから。君が動かなければ世界は動かない、君が動けば世界は動く。この言葉は、若い日の私に希望をもって生きていっていいんだよ、と語りかけてくれた本。
続いては、
『20世紀』(上・下巻)
この本は、『大不況には本を読む』で、黒船がやってきて開国した以降の、この150年という時代を、本を読むことによって検証し直したら、という橋本治が、20世紀の100年間を検証し直した本である。本人は時評はあまりやりたくない、と言っていますが、橋本治の時評のやり方というのはちょっと違う。時評というのは、”ものごと”から始まって、ああでもなく、こうでもなくものを言うものですが、橋本治の場合、もうすでにこれはこうだよね、というのが始まりになって、”ものごと”は、その考えを、やっぱりそうだよね、とセルフチェックしているような感じである。
![]() | ![]() | 二十世紀〈上〉 (ちくま文庫)
著者:橋本 治 |
![]() | ![]() | 二十世紀〈下〉 (ちくま文庫)
著者:橋本 治 |
最後は、
『窯変源氏物語』(全16巻)
この本は、紫式部のかの源氏物語を橋本治が現代に訳したものである。といっても、そこには”窯変”というしかけがあって、なんと、源氏物語を”光源氏の一人称で語る”というウルトラCをやってのけている。紫式部とその当時の源氏物語の読者にとって、光源氏というのは、ただそこに在ればよい存在であり、自分からはあまり語らない、というか、語ってほしくない存在ではなかったのではないだろうか。つまりは、「・・・・・・・・・・・・」しか語るべきものをもたない、というかもってほしくない存在でだったのではないか。
”窯変”ではその光源氏が語りだすのである。「・・・・・・・・・・・・」しか語るべきものをもたないものに語るべき言葉を語らせる、という作業を現代語訳をやりながらしたというのは、橋本治にしかできない仕事だと思う。
![]() | ![]() | 窯変 源氏物語〈1〉
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さて、この企画【本棚に残す3冊】は7番勝負で終わりですが、それに代わる企画を考えています。近いうちに始める予定です。
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