『案外、買い物好き』(村上 龍著) 村上龍が何故、青いシャツを着るのか、その答えを知りたいひとは読んでください
私は村上龍のエッセイが好きではない。『すべての男は消耗品である』シリーズなんて、見たくも読みたくもない。
この本は、あるひとからお薦めされていたのだが、幻冬舎だし、どうせすぐに文庫になるだろうと思って、文庫になるまで待っていた。
この本は、村上龍が”案外”どころではない、”病的”なまでに買い物好きなことを告白している本である。イタリアに行くのは、ナカタ選手が出場するサッカーの試合を観る楽しみよりも、買い物をする楽しみが勝っていたようだ。
買い物について、初めての小説が売れて、大金が入って、秋葉原で初めて大きな買い物をしたときの気持ちを、村上龍はこう言っている。
「大金が振り込まれて、これで自由になった、と思ったのだ。買い物が気分をよくしてくれるのは、欲しいものが手に入るから、だけではない。欲しいものを選び購入するという行為は、資本主義的な自由のひとつの象徴なのだと思う。」
村上龍らしいといえば、村上龍らしいものの言い方だ。お金が入って”自由”になった、というところと、”選ぶ”というところがポイントだろう。お金があってこそ、自立があるし、自立できたからこそ、自分で選ぶことができる。そして、そのライフスタイルが快楽になる。
つい、イタリアで青いシャツを嬉々として”選ぶ”村上龍の姿を想像してしまう。
もっとも、買い物というものに欲望のスイッチが全くない私には縁遠い世界ではあるが。
![]() | ![]() | 案外、買い物好き (幻冬舎文庫)
著者:村上 龍 |
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