『空白の叫び(下)』(貫井徳郎著) 天網恢恢疎にして漏らさず。しかし、彼らを見ているのは天ではない、人の恨みや妬みである。それが彼らに罪を重ねさせる
上巻のタイトルに、私は少年の”心の闇”に興味はない、と書いたが、それは嘘である。
少年の”心の闇”というものに向き合うのは、正直しんどい。しかし、それから目をそむけ、知らぬふりをすることが、すなわちオヤジになる、という。
そして、それを描く作家の精神力というものは凄まじいとしか言いようがない。貫井徳郎はそれをやってのけた。立派である。
少年院と更生のための施設であるが、しかし、それは贖罪のための施設ではない。だから、罪を償うことを免除された少年たちは、少年院を出てもその罪を問われ続ける。
天網恢恢疎にして漏らさず。しかし、彼らを見ているのは天ではない、彼らを恨んだり妬んだりする、人である。その人が彼らの罪を見逃さない(というか、この物語では彼らに罪を重ねさせている根源が、ひとの恨みや妬みである)。
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空白の叫び(下) |
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