『空白の叫び(上)』(貫井徳郎著) 私は少年の”心の闇”などというものに興味はない。こういう読者を相手にするブンガクシャは大変だろうね
上巻は、3人の少年が、罪を犯すまで、の物語である。
少年犯罪が起きると、マスメディアは決まり文句のように、少年の”心の闇”という言葉を口にする。
しかし、私は、少年の”心の闇”なんてものに興味は、ない。そんなものを知ってどうしようとするのか、疑問だからだ。
起きてしまった犯罪に対して私たちが考え、行動すべきことは、その罪を犯した者にいかにその罪を償わせるか、ということと、もし、それが未然に防ぐことができたのであれば、それが二度と起こらないように、実現性のある対策をとることだ。
そして、マスメディアが騒ぎ立てる少年の”心の闇”を知ったところで、どうしようもない。
しかも、私たちは少年の”心の闇”というものを、本当は知っている。そして、知らないふりをして騒ぎ立てている。なぜならば、私たちはかっては少年だったからだ。
この作家が全力で描こうとしていることは、私たちが知っているくせに、知らないふりをしている、少年の”心の闇”について、である。
そういうものに向き合う作家というものは凄いなあ、と思う。それは、「そういうものを今さら”知っている”と言ってどうするの?」という声と向き合わなければならないからである。
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空白の叫び(上) |
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