『温かな手』(石持浅海著) 温かな手は、人間こそ持つものである。
この物語には、ギンちゃん、ムーちゃんという、人間ではないが人間に擬態している生物が登場する。彼らは、人間から生命力を吸い取って生きている、その”温かな手”によって。
そのため、彼らは、”魂のきれいな”(美味しい)パトナーを選び、美味しい生命力を程よく摂取している。
何故、作者は、わざわざ人間でない生物を出現されたのか? あとがきでその理由を書いているが、あまり説得力がない。
作者が得たかったのは、人間社会にいながらも人間社会を俯瞰して見れる視点ではなかったか。そんな彼らが持つのが、人間の生命力を吸い取る”温かな手”だとは!
しかし、温かな手は、人間こそ持つものである。そんな思いをずっと思い抱きながら最後まで読んだ。その点では作者の思いも同じで良かったと最後の最後で思えた。
![]() |
温かな手 |
作者は、たまにこういうSFっぽいミステリィを発表しているが、私はどちからというと、鉄板な”扉は閉ざされたまま”のような作品の方が好きだな。
« 映画『オーケストラ!』 クラシックは”のだめ”だけのものじゃない。パリにチャイコフスキーを解き放て! | トップページ | MtG: 懲りもせず、”エンチャントレス”を作ってみた »
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 【安吾を読む】『木枯の酒倉から 聖なる酔つ払ひは神々の魔手に誘惑された話』「俺の行く道はいつも茨だ。茨だけれど愉快なんだ。」(2014.07.11)
- 『金融緩和の罠』(藻谷浩介・河野龍太郎・小野善康著、萱野稔人編)金融緩和より雇用を増やすことこそがデフレ脱却の道。(2014.07.10)
- 『ひとを“嫌う”ということ』(中島義道著)ひとを「嫌う」ということを自分の人生を豊かにする素材として活用すべき。(2014.07.09)
- 【安吾を読む】『街はふるさと』「ウガイをしたり、手を洗ったりして、忘れられないようなことは、私たちの生活にはないのです。」(2014.07.08)
- 『天災と日本人 寺田寅彦随筆選』(寺田寅彦著,山折哲雄編)地震や津波といった天災からこの国を守ることこそが「国防」である。(2014.07.04)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント