会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ

『会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ』
齊藤 正明 (著)
マイコミ新書

面白いタイトルに惹かれて買って読んでみたら、面白かった。

会社の命令でマグロ漁船に乗るハメになってしまった著者は、船酔いと戦いつつ、携帯もメールもない、コンビニも病院もない、船長２０メートルの小さな世界で、様々なことを学んでいく。

海の上は死と背中合わせの世界でもある。そんな世界で生きる漁師たちの言葉は、お利口さんの書く自己啓発書よりもずっと重みと深みがある。

例えば、

「『努力』っちゆー言葉には、どっか『結果』という見返りを期待しちょるように聞こえるの。でもの、努力はたいてい報われんのぞ。最初から報われる期待をして努力すると、『努力したのに・・・・・・』と、すぐにあきらめよる」(p.50-51)

やればできる。目標に向かって必要なインプットを追求すれば必ずそれに見合ったアウトプットが得られる。果たしてそうか？　そうした努力をし続けて疲れ果てたひとはフツーの幸せを求める。果たしてそうか？　

「努力はたいてい報われない。」この真実と向き合う強さをもっているひとこそが、幸せになれると私は思う。


また、漁師はこんなことも言う。

「でもの、いくら自分を磨いたって、人間できないことばかりぞ。さっき言ったとおり、おいどーも海に出るとできないことばかりど。『完璧』を目指すほど、自分にできないところが目立って落ち込む。結果、完璧とはより遠くなるんど」(p.65)

「自分はスーパーマンではない。」この単純な真実と向き合う強さをもっているひとこそが、幸せになれると私は思う。


この本の著者の斎藤さんは、マグロ船に乗せられても、腐らずに、そこから何かを学ぼうとした。その姿勢は素晴らしいと思う。そして、それを本として私たちに紹介してくれたことに感謝したい。


会社人生で必要な知恵はすべてマグロ船で学んだ