会社に人生を預けるな
『会社に人生を預けるな リスク・リテラシーを磨く』
勝間和代 (著)
光文社新書
勝間和代、カツマー以外を敵に回す、の本。
この本は、「お金は銀行に預けるな」の姉妹版である。「お金は銀行に預けるな」の出版時点ではまだ認知度・理解度の低かった「リスク・リテラシー」という概念を身につけてもらおうという本である。
そして、終身雇用こそリスクの高い制度であり、それが現在の日本の停滞を産んでいる諸悪の根源だと言う。そして、終身雇用という一見リスクの低い生き方こそが、実はよりリスクの高い生き方であり、それを抜け出すというリスクを取ることの方が、実はよりリスクの低い生き方だと主張する。それができるひと(つまりはカツマーと呼ばれるひとたち)にはそのリスクを取るべきだ、と訴えている。
果たして、その主張にどれだけの説得力があるだろうか。いわゆるカツマーと呼ばれるひとびと以外に、終身雇用という制度から抜け出せ、と説得できるだけの材料がこの本で示されているだろうか。
私はその主張はやや焦りすぎではないかと思える。
リスクを取る、というのは、つまり自己責任である。そして、成果主義や小泉改革という形で、私たちはお上や会社から自己責任というものを押し付けらてきた。本書で紹介されている「リスク・リテラシー」というものを身につけるすべもなく、自己責任という荒波に投げ出されたのである。つまりは、準備不足だったのだ。
それこそが、今の日本の停滞の諸悪の根源だと私は思う。
この本はタイトルが良くない。「会社に人生を預けるな」と言う前に、「リスク・リテラシーを磨け」というべきであった。センセーショナルなタイトルでないと本は売れないのかも知れないが。
焦りは禁物である。「会社に人生を預けるな」などと大口を叩いていわゆるカツマーと呼ばれるひとたち以外をまとめて敵に回すよりも、勝間さん自身が言っているように、「毎日0.2%」のリスクを取ることの重要性を、地道に訴え、それを広めていく方が、勝間さんらしいやり方のように思える。回り道かもしれないが、そういうやり方がいわゆるカツマーと呼ばれるひとたち以外を巻き込んで日本を変えていく力になっていくのだと私は思う。

会社に人生を預けるな
勝間和代 (著)
光文社新書
勝間和代、カツマー以外を敵に回す、の本。
この本は、「お金は銀行に預けるな」の姉妹版である。「お金は銀行に預けるな」の出版時点ではまだ認知度・理解度の低かった「リスク・リテラシー」という概念を身につけてもらおうという本である。
そして、終身雇用こそリスクの高い制度であり、それが現在の日本の停滞を産んでいる諸悪の根源だと言う。そして、終身雇用という一見リスクの低い生き方こそが、実はよりリスクの高い生き方であり、それを抜け出すというリスクを取ることの方が、実はよりリスクの低い生き方だと主張する。それができるひと(つまりはカツマーと呼ばれるひとたち)にはそのリスクを取るべきだ、と訴えている。
果たして、その主張にどれだけの説得力があるだろうか。いわゆるカツマーと呼ばれるひとびと以外に、終身雇用という制度から抜け出せ、と説得できるだけの材料がこの本で示されているだろうか。
私はその主張はやや焦りすぎではないかと思える。
リスクを取る、というのは、つまり自己責任である。そして、成果主義や小泉改革という形で、私たちはお上や会社から自己責任というものを押し付けらてきた。本書で紹介されている「リスク・リテラシー」というものを身につけるすべもなく、自己責任という荒波に投げ出されたのである。つまりは、準備不足だったのだ。
それこそが、今の日本の停滞の諸悪の根源だと私は思う。
この本はタイトルが良くない。「会社に人生を預けるな」と言う前に、「リスク・リテラシーを磨け」というべきであった。センセーショナルなタイトルでないと本は売れないのかも知れないが。
焦りは禁物である。「会社に人生を預けるな」などと大口を叩いていわゆるカツマーと呼ばれるひとたち以外をまとめて敵に回すよりも、勝間さん自身が言っているように、「毎日0.2%」のリスクを取ることの重要性を、地道に訴え、それを広めていく方が、勝間さんらしいやり方のように思える。回り道かもしれないが、そういうやり方がいわゆるカツマーと呼ばれるひとたち以外を巻き込んで日本を変えていく力になっていくのだと私は思う。

会社に人生を預けるな
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コメント
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TITLE: Re:会社に人生を預けるな
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私は終身雇用肯定論者なので坊さまの意見に賛成。
被用者側には「スキルさえあれば転職でどんどんステップアップできる」という幻想を与えて、やりがいがないとかスキルにならないとかで3年で辞める大義名分を与え、雇用側には「人材は、文字どおり適材適所で使い捨てればよい」という人材育成手抜きの大義名分を与えた。
おかげで、スキルを切り売りするハケンは隆盛し、そして景気変動ひとつでそのハケンをあっさり切ることも、できる世の中になったわけだ。
20代で薄給でも、60まで昇給しながら働ける展望があった時代は、そんなの当たり前だと考えつましく暮らし真面目に働いた。
今、20代のハケンで薄給なら、目先の困窮への強迫観念から転職を繰り返し、肥やすべきスキルも、経験も、信頼も育たないまま年を経る。
あるいは、無慈悲な会社に切られる。
人を大事にしない傲慢な会社と、真面目さを失った傲慢な労働者は、互いに攻撃しあって、共倒れるように見える。
既に人々はこの失敗に気付いているから、この本はあんまり売れそうにない。
もっと前に出版されていたら、もっとたくさんの勘違いフリーターを生み出す一助となっていただろう。
投稿: アビィ | 2009年4月 4日 (土) 20時51分
TITLE: まずは若者の正社員化を
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この本の論調は、若者や女性の活躍の場を増やすために、中高年や老人は犠牲になれ、と言っているようなものです。仮に終身雇用がなくなった場合のセイフティネットを考慮せずに、リスクを取れ、というのも乱暴な話です。そういう状況であれば、誰だってリスクを取ろうと思えないでしょう。
また、それで、若者の正社員化が促進されるとも到底思えません。会社に中高年をリストラする口実しか与えないでしょう。
私は派遣法をスタート時点の13職種に戻すことが、若者の正規社員化を促進する一番の早道だと思っています。
まずは、会社に若者を正規社員として雇用させることです。そうして、会社に若者を使い捨てにさせないことです。若者にスキルや経験やひととしても魅力を磨く場を提供することです。
そうすることによって初めて、リスクを取るのも選択肢のひとつだよ、と言えるのではないでしょうか。そういう状態にしてからであれば、終身雇用の維持の是非をもう一度問い直しても良いと思います。
それをせずに、終身雇用だけなくせばすべて解決してこの国が良くなるとは到底思えません。それを強行すれば、若者も中高年も共倒れになる。それこそ、滅びの道です。
投稿: ざっくばらん坊 | 2009年4月 4日 (土) 22時06分